武水しぎの

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サブリースという『賭け』

(2008年03月03日) 「大家さん読本」コラムに初出。

「週刊ダイヤモンド2008年2月9日号」「賃貸住宅新聞2008年2月18日号」「東洋経済2008年3月1日号」と、各誌でサブリースの話題が並んだ2月でしたが、みなさまお読みになりましたでしょうか?

今や、家主の事業計画の選択肢として欠かせないサブリース。サブリースとは本来「転貸」の意ですが、本稿では一括借り上げシステムの意味で用います。

このメリットですが、これは「手間入らず」という言葉に集約できると思います。

賃貸経営につきものの管理業務・営業業務。集金管理では、入金状況のチェックと滞納督促。入居者からのクレーム処理。空室対策と仲介業者さんとのやりとり。原状回復に関する交渉や改装費用。

コレが全ていらなくなる上に、賃借人はサブリース事業者のみですから、税務処理は極めて簡単になります。

会計関係の効果は他にもありまして、融資を受ける銀行へ出す資料も簡単になりますし、税務調査も......。

管理の手間、事務の手間の削減効果は絶大で、忙しい兼業家主や体力的にきつい家主にはありがたい。

それに対してデメリットを一言で言うと「打つ手なし」となりましょうか。

礼金はサブリース事業者の取り分だとか、免責期間があるだとかは、あまり本質的なことではありません。はっきりと「その金額で手間を買う」と割り切りの可能な部分でしょう。

募集期間中は賃料が入らないのは当然のことでもありますし、礼金も多くは広告料で消える場合も多いものでもあります。

よく言われるデメリットとして「当初期間経過後の保証賃料の変更」があります。これは「期間経過後を見通して判断すればよい」とよく言われます。

「30年間保証可能」、というサブリース契約の勧誘文句がありますが、30年間そのままの賃料での保証がありえないのは、少し想像力を働かせれば容易にわかることでしょう。30年前の社会と今の社会、そしてその間の社会の変動を考えればよいと思います。

そこでよくある当初期間の設定は「10年」です。これは裏を返せば、「10年以上の見通しなんてたたないよ!」という判断の現れでもあります。なお、10年というのは新築の場合に多いケースで、既存物件の場合はさらに短くなることも多いでしょう。

すなわち、「期間経過後を見通して」ではなく、純粋に保証期間中の手間とコストを天秤にかけて判断するほうが実状に合っているのではないかと思います。

それでも「期間経過後を見通して判断」する場合。その判断の誤差はどの程度ありそうか、その誤差を自分の経済的体力が吸収可能かも考える必要があるでしょう。

「打つ手なし」のもっとも重要な部分は、「サブリース事業者は賃借人」であることです。

したがって、借地借家法上の賃借人としての保護を全て受けられる。現在の法律上、賃貸借契約の解約権は、事実上賃借人のみにあります。そして募集賃料も保証賃料も決めるのはサブリース事業者。

サブリース事業者の収益限は、基本的には保証賃料と成約賃料の差益です。と、いうことは基本的にはサブリース事業者とオーナーの利益は相反します。右肩上がりの市況であれば、それでもお互い笑っていられることでしょう。けれども、厳しい市況のときはどうでしょうか。

空室を埋めるもっとも簡単な方法は、募集賃料を入居確実な域--相場のやや下まで下げること。

その前提で保証賃料の改訂交渉を行い、オーナーが断ればサブリース事業者は契約を解約することができます。サブリース事業者が一方的に改訂してきた場合も、対抗するのはかなり困難でしょう。

そして、借地借家法上、「賃貸人からの解約」も困難です。サブリース事業者も信用は大事ですから、オーナーの期待に沿うよう、できうる限りの努力はするでしょうが、先方もビジネスなのですから、その「努力」にも自ずと限度はあります。

サブリースは確かに手間のいらない、非常に楽な物件運営方法です。ですが、想像以上に大きな決断であり、賭けであるという認識が必要だと思います。

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