夜逃げ発覚!
(2008年05月12日) 「大家さん読本」コラムに初出。
本稿では無断退去されることを総じて夜逃げということにします。多いのは当然、滞納者の夜逃げ。
督促に訪問してみると、電気が止まっている、ガスが止まっている。郵便受けには日に日に郵便物がたまり、水道メーターも動かない。そんなところから夜逃げは発覚します。家財道具をもって逃げた場合は、窓からがらんどうな様子がわかったりも。
明け渡しの一筆さえあれば、部屋に入って次のお客様を迎える段取りもできますがそうでない場合は厄介です。夜逃げた人との賃貸契約をまず終わらせなければいけません。
解約手続きと、残置物の処理。これがまず第一の目標です。
とりあえずは本人か家族に電話です。夜逃げする人の多くは、ちゃんと携帯電話を持っているのが今のご時世。留守電にでも「鍵返せ」「解約通知書送れ」と入れておきます。
命令形で書きましたが、「お引越しされたなら連絡ください」ですますこともあります。相手をみながら、脅したり、譲歩のエサをまいたり。
そして律儀な方はこれでちゃんと送ってきたりします。電話ででも「引っ越しました。残りものは捨てて構いません」という言質がえられればOKです。
また、なぜか夜逃げなのに、郵便局に転居届を出す人がおり、夜逃げにあった物件の住所宛てに郵便を出すと、引っ越し先へ送られることも。これですめばきれいな夜逃げといえるでしょう。
当然、身内や保証人にも連絡し、本人の代理人として解約手続きを依頼することもあります。解約手続き無しでは保証人の債務も増えますから、多くの人は協力してくれます。
本人の行方ですが、住民票をとってみると動いていることがあります。これじゃ夜逃げの意味ないんですけどね。個人情報保護のなんのとうるさいご時世ですが、利害関係のある者は、役所で相手方の住民票の交付を申請するとちゃんと出してくれるのです。本人がダメなら家族一式とってみると、学齢期のお子さんがいるときなどは比較的住民票の移動が把握できる可能性が高いといえましょう。
滞納賃料の回収は次の課題となりますが、費用倒れになることも多いので、その辺は見計らいなのです。
さて、がちゃん、とその部屋を開けてみて。
きれいな夜逃げか、汚い夜逃げかスリルに満ちた瞬間です。
きれいに掃除してあって、荷物もないと、それまでの煮え湯を忘れて寛大な気分になったりなんかして。それだけ荷物の有無ってインパクトがあります。
荷物の残る夜逃げは、本当に汚いのが多いんですよ!ごみも出さず、洗濯物も積み上がり、掃除も当然長らくしてない。心に余裕がない(だから夜逃げになるんだろうけど)のがひしひしと感じられますが、同情よりもため息です。コレこっちが始末するのか......。
保証人さんが代理で手続きしてくれるときは、「滞納賃料を請求しないから、荷物全部出して」ということも多いです。
不思議なことに(笑)、さかさまの「荷物はこっちで処分するから、滞納賃料払って」よりもよく応じてくれます。もちろん両方してくれるのが一番いいんですけどね。
それでも、残った荷物の中に、子供の写真やおもちゃなんかがあったりすると、少し悲しくなったりするのです。