武水しぎの

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原付処分騒動

2005年4月15日

O家さんは困っていました。
一台の原付がO家さんの物件の駐輪場に乗り捨てられていたのは、1年半ほど前。鍵は壊され、ナンバープレートもなし。見るからに盗難車だったのですが、警察に届けると、
「盗難届け出てませんねぇ(^^)」
「じゃ、どうすりゃいいんですか」
「しばらく様子見てください(^^)」
「違法駐車で撤去してくださいよ」
「いやぁ、ご存知でしょ。出来ませんよ(^^)」
「勝手に捨てたらやっぱりまずいですかね」
「そりゃちょっとまずいですね」
「じゃ、どうすりゃいいんですか」
「しばらく様子みてください」
そう、民有地内のは警察は撤去してくれません。公道ならば持ってってくれるので、実は人目をしのんでなるべく邪魔にならない公道に捨てに行くのがてっとりばやい解決法ではあるのです。四輪なら無理ですが原付なら運べるし。
でもなんだか、放置し返すのは気分がよくありません。そんなことするのは正義感が許さない。……いや、ホンネを言えば、「放置していったヤツと同じことをするのはケッタクソ悪い」というつまらない意地なのですが――。
ところでゴミはゴミを呼ぶという法則があります。ゴミがあると、安心してみんなそこへ捨てていくアレです。ご多分に漏れず、放置原付は放置原付を呼びました。しかも全部盗難届け出てません。そこまで丁寧に仲間を呼ばなくてもいいようなものです。気がつけばナンバー無しの放置原付は4台になっていました。そして最初の1台には苔が青々としげり、見事な風情をかもしだしております。
何回か「期限までに撤去しなければ処分する」貼り紙もしてますが、いっこう効果は無く、むなしく苔のみが育っていきます。バイク屋に処分を依頼しましたが、所有者がわからないものは引き受けられない、と断られました。

 そして5台目。さすがに少し傾向を変えようと思ったのか、今度はナンバーが付いてます。ナンバーが付いていれば持ち主に連絡が行くでしょう。O家さんはまた警察に連絡し、盗難車かみてほしいと依頼しました。
「いやぁ、これも盗難届け出てませんねぇ(^^)」
「本人わかりますか」
「市町村がナンバー交付してますから、そっちへ問い合わせてください(^^)」 ナンバーをメモし、その市に電話をかけたO家さんは、原付の係お願いします、と頼みました。
「はい、税務課です」
かくかくしかじか、とわけを話しますと、
「うちは課税しているだけですので、プレートの係へつなぎますね」
チゴイネルワイゼンが流れ、
「はい、係です」
「かくかくしかじか」
「うちはプレート出すだけなので、税務課へ……」
「いや、その税務課でこっちだと言われたんですけど」
「しばらくお待ちください」
再びチゴイネルワイゼン。
「税務課の小林です。申し訳ありませんがもう一度事情を……」
さっきと違う声です。
「かくかくしかじか(怒)」
事情はわかったが、個人情報を言うわけにはいかないので、本人に連絡して本人からO家さんに連絡してもらうことになりました。予想された対応ですが、なぜそれだけのことでなぜこんなに時間がかかるんだ……。
とりあえず1週間ほど待ってみたO家さんですが、やはり連絡はありません。電話を取り、今度は直接小林さんにつないでもらいました。
「うちからはその日に電話をかけましたが、応答がないので次の日に手紙を出しました」
「じゃ、そっちの市役所へバイク持ってっていいですか。市役所に取りに来てもらってくださいよ」
「同じ市内からなら警察を通して運ばれてきますので、警察を通してください」
「警察がそっちに言えって言ったんですよ」
「おかしいですねぇ。してくれるんですけどねぇ。他市じゃしてないのかもしれませんね」
O家さんも大概怒ってますので、多少支離滅裂です。
「とにかく警察に言えばいいんですね」
「はい(^^)」
もう意地になってるO家さん、再び警察にかけ今のことを話します。
「かくかくしかじか」
「そうですか。でもうちではやってませんよ」
あっさりと断られてしまいました。
「じゃ、どうすりゃいいんですか」
「市のゴミの方に問い合わせて見られては(^^)」
よろよろしながらO家さんは市に電話をかけました。
「かくかくしかじか(泣)」
「ああ、それはお困りですね。市の方では原付は処分してませんので、私から警察に問い合わせてみましょう」
なんと、ここへ来て一番の頼りになりそうな返答です。たらいまわしにされ続けたO家さんは、その一言で救われた気持ちになりました。
するとしばらくして警察から電話がありました。
「生活環境課の長谷です」
口ぶりから察するに、先ほどの人よりも偉いさんのようです。
「あなたの所有地にあるんですよね。じゃ、今日の日付入りで半年後に撤去する旨、バイクに貼っといてください。で、今日の写真も撮っといてくださいね。それで半年保管してもらえば、それで処分してけっこうですから。ナンバーのあるモノはコチラから所有者に連絡いれます」
おお、なんとあざやかな対応でしょう! 市役所からの連絡には応じなかったナンバー付の所有者も、警察に声をかけられたら、あっさり撤去しました。初めっからそう言ってくれよ……って感じです。

 その後。通りを軽トラが音楽を流しながらやってきました。
「♪バイク、単車、オートバイ♪」
中古バイクの引取り屋です。中古バイクの買取や処分をしてる流しの業者。警察は確かにああ言ってくれましたが、やはりまともなバイク屋はなかなか処分を引き受けてくれません。……気持ちはわからないでもないですが。
そこで仕方なくO家さんは流しの業者を捕まえて処分を依頼しました。なかなかタイミングよく現れないので、気をもみましたが、これでやっと放置原付は一掃。処分料はかかりましたが、すっきりとした自転車置き場を見て、O家さんはほっと一息つきました。

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