武水しぎの

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返る?返らない?申込金・手付金

2004年5月19日

賃貸関係の相談を、さまざまなサイトで見ていると、「ある物件を申し込んだ後で、気が変わり申込を撤回した。払った申込金は返ってくるか?」という質問をときどき見ます。
「申込金は返ってくる。断固として請求を」「手付金なら戻らない可能性あり。領収書の但し書きを見て」という回答が寄せられることが多いようです。

普段はこのような申込金をめぐる事例とは無縁な管理人ですが、たまたま昨年は早々と「手付金」を振り込んでくださった例、こちらから「手付金」を請求したところ、そのためかどうか申込を撤回された例を経験しました。

手付金が振り込まれた例は、
業者さんが、「部屋をキープしたいなら、1か月分でも半月分でも手付けをうってください」と言ったらば、本当に2/3か月分を手付けとして直接家主に振り込んでこられました。

撤回された例は、
申込があり、入居OKしたのですが、家賃発生日が2ヶ月近く先。2ヶ月も部屋を押さえられた上に、最後に気が変わられてはこちらも困りますので、「10日ほどの間に決済するか手付けを入れてください」と申し入れました。10日後に申込撤回の連絡がありました。

そんなこんなで、「申込金」「手付金」って……???
となっていたところ、おりよく大阪府建築振興課の作った「賃貸借契約におけるちょっとアドバイス」という小冊子を入手。(平成15年3月発行)

ではお役所のこの問題に関する見解を見てみましょう。以下はこの冊子による「一般的な契約の流れ」です。

① 貸主が媒介業者に媒介依頼

② 媒介業者が借主一般に広告

③ 借主が媒介業者に物件案内を求める。(書面説明以外の情報提供)

④ 媒介業者による書面による物件説明(重要事項説明、契約書面の提示など)

⑤ 借主が媒介業者に対して、預かり金(申込証拠金)を支払う

⑥ 媒介業者が貸主に対して、借主の契約意思の確認を称する書類(入居申込書など)を送付(電話などでの連絡も考えられる)して、貸主の契約意思を確認する。   [到達主義] (民法第97条)

[ここで注意]
次の⑦にいたらない段階で。借主側からの申込の撤回があれば、媒介業者は預かり金(申込証拠金)を借主に返還しなければならない。

⑦ 貸主が媒介業者に対して、契約意思を伝える(貸す・貸さないの意思表示)。

[ここで注意]
この段階で貸主から契約意思の発信(表示)があると、貸主と借主の双方の意思が一致することになり、契約が成立したとみなされる。そのために、預かり金(申込証拠金)は、手付金として処理される。借主が申込意思を撤回する場合、それは「契約の解除」となるため、手付金を放棄しなければならない。
この場合、貸主の契約意思は必ずしも借主に到達しなくてもよい。   [発信主義](民法第526条)

よく言われる、「契約書を交わす前だから契約してない」が誤解であるというのがこれでわかります。もっとも、実際のトラブルでは、意思表示の有無の証明が大変でしょうが。

……ん? じゃずっと以前返金したアレ(ページ冒頭の件とは別件)は返さなくてもよかったんだな(苦笑)。

大勢の誤解と、その上前をはねる人間のおかげで絶えないトラブルになってるのが、この「申込金」のようです。
管理人も勉強になりました。お役所のパンフはありがたし。

 

追記

上の引用、お分かりの方も多いと思いますが、ぜんぜん「一般的な契約の流れ」じゃありません。

>④ 媒介業者による書面による物件説明(重要事項説明、契約書面の提示など)

これは契約・決済の直前(同日)にすることが多いですよね。番号でいえば⑦より後です。

>⑤ 借主が媒介業者に対して、預かり金(申込証拠金)を支払う

業者さんが言ってくれないだけかも知れませんが。
管理人のトコでは「預かり金いただいてます」なんてめったに聞かないです。使い方によっては、うちら(大家)に交渉をのませるいい札になると思うんですけどねぇ。

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