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大家さんの本人訴訟 強制執行編

2008年4月18日

大家さんの本人訴訟 強制執行編

「出てけ!」と滞納者を訴えた大家さん、無事に勝訴の判決を勝ち取りました。
さぁ、次は強制執行だ!


と、気ははやりますが、まずは被告への判決送達完了と、判決の確定を待たねばなりません。なにせ
「判決に不服のある当事者は,判決送達日から2週間以内に上級裁判所に対して控訴をすることができ」るのです。
参考:http://www.courts.go.jp/saiban/syurui/minzi/minzi_01_02_04.html

ここで、察しのいい方はお気づきでしょう。控訴がない場合、確定は「判決送達日」から2週間経過後なのです。
送達されなかったら......、すなわち被告が受け取らずに洞ヶ峠を決め込んだら......。ここでも時間が経過してゆきます。どうしても受け取らない場合は、最終的には公示送達になるのでしょう。
ちなみに金銭債務は、訴訟時に「仮執行の宣言」を求めておけば仮執行ができますが、明渡に仮執行は通常認められません。

さて。裁判所の担当書記官に電話をかけ、判決確定がわかると、自分の持っている判決正本と印鑑を片手に裁判所へ向かいます。
強制執行の申立てをする前に、3つの申請・申立が必要なのです(→雛型はこちら)。A4の紙と印鑑を持ってゆくとその場で書けて便利です。
その3つとは...

・判決正本送達証明申請
・判決確定証明申請
・執行文付与の申立

です。これらを受け取るときには、「受書」といいまして、「上記のものを受けとりました」という書類を出します。
さて、ここで注意。申請・申立に行く時には、必ず担当書記官がいるかどうか確認します。いなければ、受理はしてくれますが、それだけ。また取りにこなくてはなりません(受理さえも渋られることがある)。
担当書記官の手が空いていれば、すぐにしてくれることもあります(このあたり裁判所は悪い意味でものすごくお役所的です)。


書類が揃えば、いよいよ明渡執行の申立です! 動産差押の申立も一緒にやってもかまいませんが、意味はほとんどありません(申立費用がかかる分、損です)。ただ、債務者本人名義の自動車がある場合はやる価値がある場合もあります。ただし、普通乗用車は「自動車差押」ができますが、軽自動車の場合は「動産差押」となります。
執行の申立は、執行を行う場所の管轄裁判所で行います。
申立書は管轄裁判所の執行部にある雛型に記入するとラクです。
訴訟時に「明渡に至るまでの損害金」として請求した金員は、執行申立日が明渡日として取り扱われます。
申立には予納金6万円が必要です。
申立を行うときに、執行官の手足となって実際の執行業務を行う執行業者を決めなければなりません。そして強制執行にかかるお金の多くを占めるのが執行業者に払う実費です。でも......執行業者と普段のつきあいなんてありません。裁判所が管轄内の執行業者の名簿をくれますので、その中から電話でおおまかな見積もりを依頼して執行業者を決めます。
担当執行官が決まれば裁判所から連絡がありますので、その時に執行業者を伝えます。
そして「執行催告の日」の打ち合わせをします。

催告の時には、債権者・執行官・立会人・強制執行業者が明渡対象物件に集合します。
ここで、合い鍵が必要です。なければ、解錠技術者(鍵屋)をあらかじめ呼ぶ必要がありますので、しっかりチェックしておきましょう。
インタホンを鳴らして相手が出てくれば対面で催告。出てこなければ、合い鍵で入室し、貼り紙での催告となります。
執行業者はここで部屋の中を見回して、具体的な金額をはじき出します。
執行官に言われる通り、書類にサイン・押印して催告は終わりです。


いよいよ執行の断行日。
再び債権者・執行官・立会人・強制執行業者が明渡対象物件に集合します。
執行官が断行を相手方に伝え、執行業者が作業開始。てきぱきと部屋の中のものが撤去されてゆきます。
荷物の行き先は、あらかじめ決めておいた保管場所(多くの場合倉庫業者の倉庫。執行業者が手配します)。作業の傍ら、執行業者と執行官が目録を作ってゆきます。あとから執行調書の中に記載されます。
部屋の中がからっぽになれば、明渡完了! 執行官に言われる通り、書類にサイン・押印して執行は終わりです。

そして倉庫に保管されている荷物。これを「目的外動産」といいます。
これは指定された期日(断行日から)までに、持ち主、すなわち相手方が取りにくることになっています。とりに来なければ、期日に競売されます。平成16年から催告時に期日指定しておけば、断行日に即日売却ができる制度ができたようです(なじむ現場となじまない現場があるとは思いますが)。
競売、とはいっても、事実上は大家さんが競落して処分することになるのが実情です。
保管する倉庫代は一旦、大家さんが倉庫業者に支払います。これは相手方に請求可能です(回収できるかどうかは別にして)。

以上で、明渡強制執行手続はおしまい。
あとから予納金が余った場合は返金され、執行調書が送られてきます。


ところで、東京や大阪などでは、執行官との打合せ以降の面倒な手続きを全部請け負ってくれる執行業者がいます。
催告日や断行日、目的外動産関係、一切出向く必要はありません。そう、費用さえ惜しまなければ(苦笑)。自分が立ち会って手続きするのに比べると、正直だいぶお値段が違います。(3LDKの明渡で両方のタイプの業者さんを経験したけど、倍以上違った)
自宅近所の物件で強制執行に立ち会うのはなかなか度胸がいりますので、そういう場合は、このタイプの業者さんを選ぶと精神的にとても楽です。ただ、せめて合鍵があれば業者に渡しておきましょう。黙っていればほぼ確実に鍵屋を呼ばれます。


以上、強制執行でした!
でも途中で任意に出てってもらうと実は助かるのです。
そのあたりはこちらのサイト「夜逃げ屋事件簿」http://www.rals.net/yonigeya/oidashi1.htm をどうぞ!
強制執行手続きについても詳しくのってますのでお勧めです。

コメント(1)

加瀬 忠| 2008年6月18日 11:56

 まずは、新しいバージョンのHPをありがとうございます。私のように細かい字が読みにくい(あえて●眼とは言いますまい)者には嬉しい限りです。

 強制執行編を拝読し、とても勉強になりました。私の場合はそこまで行く直前!で明け渡しが行われましたので自分ではここまで経験してはいませんでした。
自動車については陸運事務所で調べたところ所有者は金融会社で使用者は別人! でした。何しているんだか!?

 でも、不動産の強制執行って、預金の差押などと違って、確かにお金がかかりそうですね。知人の弁護士に聞いたところでは東京から中部地方の某県の工場の明渡しで特殊な方々が居ついてしまっている物件の強制執行で明け渡しまで1千万かかった(“しか”かからなかったという感じ?)と話していました。私のとこみたいなのではそうはかからないでしょうが、それでも○十万は覚悟?
勝訴してそれでは全く“勝訴”ってなんなんだ!と思います。

 百万近くかけて裁判して、明け渡しにはグズグズするしで頭に来ていましたが、“直前でも出て行っただけマシ!”と考えましょうかね。

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