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殺人犯知りませんか?ある日、O家さんのもとに電話がかかってきました。「N県K警察署ですけれども、そちらの賃貸マンションに入っておられる方のことで……」 マルシェ北坂のことだそうです。この物件は管理会社にまかせてあるので、O家さんは管理会社の電話番号を返答しました。そちらに問い合わせてほしい、と。 2日後、また警察から電話がかかってきました。 「N県K警察署ですけれども」 「管理会社にお願いします」 「管理会社さんに断られましてね。警察手帳持って事務所まで来てくれって言われました」 「そりゃそうでしょう。電話だと、あなたがホントに警察かどうかわからないもの」 けっこう、よくかかってきます。入居者の照会の電話。カード会社とか、保険会社とか、なんだか怪しげな金融機関じゃないかと思うようなところとか。 たいがいは、「今入居されてますか?」だとか「家賃の支払いはどうですか?」だとか。昔はうっかり答えたこともありますが、よくよくかんがえれば個人情報もイイトコです。支払い状況なんて……開示すると大変です。連帯保証人さんからの照会には答えるようにしてますが、本人確認が面倒になった、とF本さんも嘆いていました。 そのK警察のT刑事によりますと、さる殺人事件の犯人が、マルシェ北坂のある地域に住んでいる、とのことでこの辺りの賃貸住宅はしらみつぶしに捜査中であるとのこと。O家さんも警察に協力したいのはやまやまです。 そこで、先方の電話番号を聞き、かけなおすことにしました。 が、ついいつもの癖で着信履歴を使ってかけてしまったO家さん。 「はい、G警察署です」 と言われて面食らいました。 「N県K警察署ではないんですか?」 「いえ、H県G警察署ですけれども」 O家さんは謝って電話を切りました。着信履歴を確認すると、確かに普段見慣れた地元の警察の番号です。 再度着信からかけて事情を話しますと、 「あぁ、それは警察の交換台を使ってつないでるんです」 とのことで、O家さんも今回の照会が騙りでないことがわかって一安心です。ついでですから、K警察署につないでもらい、先ほどの刑事を呼んでもらいました。 探している参考人は、40-50ぐらいの男性で、痩せ型とのこと。 入居者の年格好を頭の中に思い浮かべますが、マルシェ北坂は比較的若い人が多く、該当する人が思い浮かびません。一人、そのぐらいの年の人はいるのですが、これがまた相撲取りみたいな恰幅の人で……。 O家さんがその旨を伝えますと、T刑事は丁重に例を言って、電話を切りました。 さて、さらに1ヶ月がたった頃です。 O家さんの家にT刑事が訪ねてきました。同僚の方と二人組みで、 「そのせつはありがとうございました」 と、警察手帳を示します。……こういっては失礼ですが、手帳がなければ警察の人だとはたぶん思わないでしょう。服装も私服ですし、雰囲気も似た職業の人は多いかと思われます。 「実はですね、あの時の男は捕まえまして、今物証をを探してるんですよ」 なんでも犯人の自白によると、犯行に使った道具や、被害者の持ち物なんかを、借りていたシャッター付の車庫に保管していたとか。偽名を使って契約していることも考えられるし、本人が自白して以外のところにも隠している可能性があるので、ということです。 T刑事は犯人の写真を見せました。 「この男なんですがね、お心当たりはありませんか」 O家さんは見たことのない男でした。 「そうですか、ありがとうございました。あとO家さんとこのほかに、この辺りにシャッター付の車庫ってありませんかね」 車庫は自主管理がこの辺の主流です。不動産屋に聞いても持ち主がわからないと、返事されることが多いのだとか。登記簿謄本をとれば土地の所有者はすぐにわかるのですが、あえて手間のかかる方法をとっているのは聞き込みも兼ねているのでしょう。 何日かあと。 風のうわさに、あの犯人は近所のどのアパートに住んでいて、どこに犯行器具を隠していたか、という話が流れてきました。 どちらもO家さんのよく知っているところです。しばらくは空きを埋めるのに、どちらも苦労することでしょう。 O家さんは深く同情のため息をつくと同時に、わが身の幸運をかみしめました。 |
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