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東京地裁平成12年12月18日判決

敷金返還請求控訴・同附帯控訴事件
東京地裁平成一二年(レ)第二五三号、同第二七八号
平成12年12月18日民事第三三部判決
控訴人(附帯被控訴人) 甲野太郎
被控訴人(附帯控訴人) 積和不動産株式会社
右代表者代表取締役 伴務
右訴訟代理人弁護士 松田耕治
右同 進士肇
右同 佐藤文昭

主   文

一 本件控訴を棄却する。
二 附帯控訴に基づき原判決中被控訴人(附帯控訴人)敗訴の部分を取り消す。
三 前項の部分に係る控訴人(附帯被控訴人)の請求を棄却する。
四 訴訟費用は、第一、二審とも控訴人(附帯被控訴人)の負担とする。
事実及び理由

第一 当事者双方の申立て
一 本件控訴について
控訴人(附帯被控訴人。以下単に「控訴人」という。)は、「原判決を取り消す。被控訴人(附帯控訴人。以下単に「被控訴人」という。)は控訴人に対して二三万八八七五円及びこれに対する平成一一年一〇月二三日から支払済みまで年五パーセントの割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。二 附帯控訴について
被控訴人は、「原判決中被控訴人敗訴部分を取り消す。同部分に係る控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも控訴人の負担とする。」との判決を求め、控訴人は、「附帯控訴を棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求めた。
第二 当事者の主張
原判決中、「第二 事案の概要」の「一 請求原因の要旨」(但し、「一 請求原因の要旨」の後に「(争いがない。)」と挿入する。)及び「二 抗弁の要旨」の記載を引用し、「三 再抗弁の要旨」以下を次のとおり訂正する。
三 再抗弁の要旨(本件特約条項の無効)
【控訴人の主張】
平成一〇年一月三一日付け賃貸借契約書における「控訴人が本件建物を明け渡すときは、控訴人は畳表の取替え、襖の張替、クロスの張替、クリーニングの費用を負担する。」という条項(以下「本件特約条項」という。)は、以下の理由から無効である。
1 誇大広告表示
被控訴人は、控訴人に対し、本件特約条項に従って計算した金額が敷金よりも高額になることを契約時及び更新時に控訴人に一切知らせず、その旨を契約書やパンフレットにも一切記載しなかった。かえって、入居募集パンフレット(《証拠略》)には、「礼金ナシ」を目立つところに明記しており、賃借人に著しく有利な物件であると誤認させる誇大広告表示をしたものである。
2 住宅金融公庫法違反
住宅金融公庫法は、自然損耗による畳、襖の張替、クロス張替、ハウスクリーニング代及び原状回復費用を賃借人に負担させることを禁止しているから、本件特約条項は同法に違反する。
3 宅建業法違反
控訴人は、契約時及び契約更新時に大和不動産武蔵浦和支店の窓口で、宅地建物取引主任者でない若い女性から、本件特約条項の説明を受けることなく、契約書に署名捺印を求められて、署名捺印したものである。
したがって、宅建業法三五条が規定する重要事項の説明がなされておらず、同条の義務に違反する。
被控訴人が提出した重要事項説明書(乙第五号証)には、「敷金の目的」(同法三五条)及び「契約終了時において清算することとされている金銭の精算に関する事項」(同法施行規則一六条)の記載が一切ないのであり、控訴人は契約時に本件特約条項の存在を認識することはできなかった。
【被控訴人の主張】
1 誇大広告表示について
本件特約条項に基づき賃借人が負担すべき金額が敷金より高額となるか否かは、敷金の額と賃借人の退室時の畳・襖・クロスの張替代及びハウスクリーニング代との比較によって決まるところ、同費用は永久不変のものではなく、また同費用を決定するのは外部の業者であって賃料とは無関係に相場が形成されるものであるから、契約時・更新時に本件特約条項により負担すべき額が敷金よりも高額になるか否かを説明することは困難であって、賃貸人に説明義務があるとはいえない。
また、入居募集のパンフレットに賃貸借契約書の約款の定めを全て記載することは、その性格上現実的ではないというべきであるし、そもそも、本件においては、実際に礼金を収受していないのであるから何ら事実を誇大化してはいない。
2 住宅金融公庫法違反について
同法三五条一項は、規制の対象として、「第一七条第一項の規定による貸付けを受けた者」であることを要件としているところ、被控訴人は、サブリース業者であって、何ら貸付けを受けていないのであるから、同法の規制を受けていない。
3 宅建業法違反について
宅建業法上、業として建物の賃貸を行う行為は宅地建物取引業にあたらないのであって、被控訴人に同法の規制は及ばない。
仮に、仲介業者が重要事項の説明を怠ったとしても、取締法規に違反した事実があるというだけであって、私法上の効力に何ら影響を与えるものではない。
第三 当裁判所の判断
一 請求原因事実は、当事者間に争いがなく、抗弁事実は、《証拠略》によれば、認められる。
控訴人は、本件特約条項の成立を否認するが、甲第一号証の契約書において、他の条項が黒の不動文字で記載されているのに対し、本件特約条項については赤の不動文字で記載されており、本件特約条項が明らかに際立って目立つところ、甲第一号証には、控訴人の署名捺印があり、その成立に争いもないから、本件特約条項のみを不成立と認めることはできない。
二 再抗弁(本件特約条項の無効)について
1 誇大広告表示について
まず、控訴人は、敷金と本件特約条項による負担額を対比して説明すべきであると主張しているが、本件特約条項による負担額がいくらになるのかを具体的に算出することは契約時には困難であったというべきであるし、そもそも控訴人主張の義務がいかなる根拠に基づいて発生するのかも不明であるといわざるを得ない。
また、入居募集パンフレットには、物件の概要、物件の所在地の地図、物件の間取、物件の賃料等が記載され、さらに「礼金ナシ」「敷金3ヶ月」と記載されているが、甲第一号証、乙第五号証によれば、被控訴人が礼金を受領していないことは明らかであり、パンフレットの記載自体が誇大広告であるとは認められない。
いずれの点から考えても、控訴人のこの主張は、控訴人の請求を基礎づけるものとはいえないことが明らかである。
2 住宅金融公庫法違反について
同法の規定及び趣旨については、原判決五丁表八行目「住宅金融公庫法」から同五丁裏七行目「解されている。」までを引用する。
そもそも同法三五条及び同法施行規則一〇条自体、同条に違反する私法上の条項を無効にするだけの効力を有している規定であるのか疑問があるのみならず、同法は、直接被控訴人を名宛人とするものではないし、被控訴人は、住宅金融公庫による低利の融資を受けておらず、同法を潜脱して不当に利得することができる立場にはなかったのであるから、たとえ同法の趣旨に則していないとしても、本件特約条項の私法上の効力を奪うことはできないというべきである。
したがって、同条違反を理由とする本件特約条項の無効は理由がない。
3 宅建業法違反について
被控訴人は宅建業者であると認められる(《証拠略》)が、宅建業者によるあらゆる取引に宅建業法上の規制が及ぶわけではない。
《証拠略》によれば、本件の契約関係は、賃貸人被控訴人、賃借人控訴人、仲介人株式会社大和不動産(以下「大和不動産」という。)であると認められる。宅建業法二条二号によれば、建物の賃貸借が同法の規制を受けるのは、宅建業者が賃貸借の代理若しくは媒介をする場合に限定されるのであり、仲介人である大和不動産が同法の規制を受けるにしても、直接の賃貸人である被控訴人に本件賃貸借契約に関して直接同法の規制が及ぶわけではない。
したがって、被控訴人に同法違反があるという主張は理由がない。
また、甲第一号証の契約書において、本件特約条項が明確に規定されており、しかも、赤い文字で特に目立つように記載されていることからすると、いかに被控訴人が宅建業者であるからといって、本件特約条項の説明義務を信義則上認めるということも困難であるというべきであり、ましてや行政法規違反がある場合に当然に私法上の効力が否定されるわけではないことを考慮すれば、本件特約条項自体が無効であるとは到底認められない。

さらに、控訴人は、契約時及び更新時に何の重要事項の説明も受けなかったと主張しているが、乙第五号証の重要事項説明書において、「以上の重要事項について説明を受け、重要事項説明書を受領しました。」と記載されている不動文字の下に、控訴人の署名捺印があることからすれば、むしろ一定の説明があったと推認されるのであり、そもそも説明がなかったという主張自体採用することができないというべきである。
なお、控訴人は、乙第五号証に、「敷金の目的」(同法三五条)及び「契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項」(同法施行規則一六条)の記載が一切ないと主張しているが、同法三五条一項六号の「代金、交換差金及び借賃以外に授受される金銭の額及び当該金銭の授受の目的」としては、乙第五号証の「賃料等」欄の敷金欄に金額が記載されていることで説明されているものと認められるし、「契約終了時において精算することとされている金銭の精算に関する事項」は、同法三五条一項一二号及び同法施行規則一六条の四の二第四号を指摘しているものと理解できるが、同規定は、平成七年の法改正により新たに追加されたものであり、乙第五号証が平成六年三月一一日付けであることからすれば、控訴人主張の規制が当時は及んでいなかったことが明らかであり、控訴人の主張は右判断に影響を及ぼすものではない。
4 以上のとおり、控訴人主張の個別の事情を検討しても本件特約条約が無効であるとはいえないのであり、本件特約条項が公序良俗に反するとも認め難いから、本件特約条項が無効であるとの控訴人の主張は理由がない。三 本件特約条項の解釈について
なお、原判決は、本件特約条項を限定解釈すると説示しているので、この点について検討を加える。
原判決四丁裏九行目から同五丁裏最終行に説示されているとおり、私的自治に基づく契約自由の原則が、適用される生活領域の特殊性に応じて変容することがあり得るものであり、消費者保護の観点が重要な視点となり、近時ますますその重みを増していることは疑いようのない事実である。そして、原判決六丁表一行目から同七丁裏四行目に説示のとおり、敷金の返還の場合において、自然損耗分を賃貸人が負担すべきであるとの判断も、実質的妥当性という観点からは一つの合理性を持った見解であると評価できる。
しかしながら、消費者保護の観点のみならず、取引の安全、契約の安定性もまた重要な観点として考慮されなければならず、また、できるだけ国家の介入を避け、個々人が自由に法律関係を形成すべきであるという市民社会の思想が私法にも反映され、私法上、私的自治の原則が重要な指導原理を果たしているところ、個人として尊重される私人が、自己の意思に基づいて契約を締結した以上は、その責任において契約上の法律関係に拘束されるというのが大前提であるというべきであり、それにもかかわらず契約内容を限定するには、当事者の意思自体が当該条項に限定的な意味を与えたにすぎないと認められる場合、契約条項の文言から限定解釈が可能である場合、当該契約関係が私的自治の原則を覆滅させてでも修正されなければならないほど不合理・不平等な結果をもたらすものであり、強行法規や公序良俗違反という一般条項の適用が可能な場合等でなければならないのである。 前記のとおり、本件特約条項は公序良俗に反するものとは認められないし、特約の文言解釈上、自然損耗分を含まない趣旨であると解釈するのも困難であり、当事者双方において本件特約条項を限定的に理解して契約を締結したという事情も認められないのであるから、本件の事実関係のもとでは、本件特約条項は文言どおりの拘束力をもつといわざるを得ない。
したがって、控訴人の本訴請求は、相殺によって消滅していると認められるから、控訴人の本訴請求は理由がない。
四 以上のとおり、本件控訴は、理由がないからこれを棄却し、本件附帯控訴は理由があるから、原判決中の被控訴人敗訴部分を取り消し、同部分に係る控訴人の本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六七条二項、六一条を適用して主文のとおり判決する。

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