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神戸地裁平成14年6月14日判決
事件番号 :平成13年(レ)第130号,平成14年(レ)第18号
事件名 :敷金返還請求控訴,同附帯控訴
裁判年月日 :H14. 6.14
裁判所名 :神戸地方裁判所
原審 :加古川簡易裁判所 平成13年(ハ)第140号
判決 平成14年6月14日 神戸地方裁判所
平成13年(レ)第130号,同14年(レ)第18号 敷金返還請求控訴,同附帯控訴事件
主文
1 控訴人の本件控訴(当審における追加・拡張請求を含む。)に基づき,原判決を次のとおり変更する。
(1) 被控訴人は,控訴人に対し,19万0648円及びこれに対する平成14年2月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 控訴人のその余の請求を棄却する。
2 本件附帯控訴を棄却する。
3 訴訟費用中,附帯控訴に要した費用は被控訴人の負担とし,その余の訴訟費用は,第1,2審を通じて4分し,その1を被控訴人の負担とし,その余は控訴人の負担とする。
4 この判決の第1項(1)は仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 控訴及び附帯控訴の各趣旨
1 控訴の趣旨
(1) 原判決を次のとおり変更する。
(2) 被控訴人は,控訴人に対し,54万2993円及びこれに対する平成14年2月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(控訴人は,原審での52万2993円の支払請求につき,当審において,54万2993円の支払請求に拡張するとともに同金員に対する平成14年2月24日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める附帯請求を追加したものである。)
(3) 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
(4) 仮執行宣言
2 附帯控訴の趣旨
(1) 原判決中,被控訴人敗訴部分を取り消す。
(2) 控訴人の請求を棄却する。
(3) 訴訟費用は,第1,2審とも控訴人の負担とする。
第2 事案の概要
本件は,被控訴人から建物を賃借していた控訴人が,賃貸借終了後,敷金の一部しか返還を受けていないとして,その残額の返還を求めた事案である。
1 争いのない事実
(1) 本件賃貸借契約の締結
控訴人は,被控訴人との間で,平成7年7月9日,原判決添付別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)を,以下の約定で賃借する契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結し,そのころ,その引渡しを受けるとともに,敷金として70万円を被控訴人に交付した。
ア 賃貸借期間
平成7年7月13日から同9年7月末日まで。ただし,貸主及び借主双方に異議がないときは,2年毎に更新されるものとする。
イ 賃料
1か月7万6000円(ただし,平成9年7月から,1か月8万円。)
ウ 支払方法
毎月末日限り翌月分前払い。
エ 敷金
70万円(敷引金28万円)
オ 敷金の返還等
(ア) 被控訴人は,本件賃貸借契約が終了し,控訴人が被控訴人に対し本件建物の明け渡し及び本件賃貸借契約に基づく債務の履行を完了した後1か月以内に,敷引金28万円を控除した残額を控訴人に返還するものとする(以下「本件敷引約定」という。)。
(イ) 上記(ア)において,控訴人に,本件賃貸借契約に基づく債務の不履行があるときは,被控訴人は,何時にても,敷金を前項の返還金額の限度内でその弁済に充当することができる。ただし,控訴人からこの充当を請求することはできない。
(2) 控訴人は,被控訴人との間の本件賃貸借契約を解約することとし,平成12年11月25日ころ,被控訴人にその旨を通知し,同年12月24日本件建物を明け渡した。
(3) 控訴人は,被控訴人から敷金のうち15万7007円の返還を受けた。
2 争点及び当事者の主張
(1) 本件敷引約定の有効性
ア 控訴人の主張
本来,敷金は,賃貸借契約期間における未払賃料や建物を毀損した場合の修理費用等に充当することを予定して預けたものであるところ,本件敷引約定に基づく敷引金28万円の使途及び性質については,本件賃貸借契約時において何ら説明がなかった上に,本件賃貸借契約書にも何ら記載がないから,本件敷引約定は不合理であり,無効である。
イ 被控訴人の反論
本件敷引約定による敷引金は,賃貸借契約締結時に発生し,賃貸人の所得となるものであり,自然損耗による修理費等に充当されるものとして,賃貸人に帰属することが合意された金員である。したがってこれを賃借人に返還する必要はない。
(2) 敷金から控除できる修繕費用
ア 被控訴人
自然損耗等による修理費用は被控訴人において負担すべきものであるが,以下の(ア)ないし(ソ)に掲げる本件建物の汚損は,明らかに自然損耗の範囲を超えた,控訴人の故意・過失又は保管義務違反による汚損である。したがって,その補修に要した費用合計26万2993円は控訴人が負担すべきものであり,敷金によって充当されるべきである。
(ア) 和室襖4枚
控訴人の落書きによる汚損であり,張り替えを要した。
(イ) 郵便ポスト
ドアに引っかける部分の破損であり,取り替えを要した。
(ウ) 敷居リアテックシート
敷居の角の部分の破損であり,張り替えを要した。
(エ) 台所,トイレ,風呂,換気扇,洗面器の汚損
入居時には,被控訴人においてクリーニングした上で入居してもらったものであり,被控訴人は,控訴人に対し,退去時にはハウスクリーニングを行うことを求めたにもかかわらず,これがなされなかった。
ハウスクリーニング費用(消費税は別途)の内訳は,以下のとおりである。
台所 1万円
トイレ 5000円
風呂 5000円
換気扇 5000円
洗面器 5000円
(オ) 浴室コーキング
カビがひどく,目地部分のコーキングのやり直しが必要であった。
(カ) 畳
全6畳の内3畳はシミ等がついて裏返し使用ができないため,表替えをしなければならなかった。
(キ) ダイニングキッチン床
赤い落書きがあり,拭き取り不可能であるため,張り替えざるを得なかった。控訴人は,14.5平方メートル中,7.5平方メートルの張り替え費用を負担すべきである。
(ク) ダイニングキッチン壁の張り替え
青の落書きがあり,拭き取り不可能であるため,張り替えざるを得なかった。控訴人は,31平方メートル中,16平方メートルの張り替え費用を負担すべきである。
(ケ) 洋室床の張り替え
青い落書きがあり,拭き取り不可能であるため,張り替えざるを得なかった。控訴人は,7.5平方メートル中,3.5平方メートルの張り替え費用を負担すべきである。
(コ) 洋室壁
落書きがあるため,張り替えざるを得なかった。控訴人は,29平方メートル中,14平方メートルの張り替え費用を負担すべきである。
(サ) 洗面所床
紫色に変色した部分の汚損があり,張り替えざるを得なかった。控訴人は,3.5平方メートル中,1.5平方メートルの張り替え費用を負担すべきである。
(シ) 洗面所壁
控訴人は,26平方メートル中,8平方メートルの張り替え費用を負担すべきである。
(ス) 玄関床
落書き又はシール跡があり,拭き取り不可能な汚れであるため,張り替えざるを得なかった。控訴人は,4.5平方メートル中,3平方メートルの張り替え費用を負担すべきである。
(セ) 玄関壁
落書きがあるため,張り替えざるを得なかった。控訴人は,19平方メートル中,10平方メートルの張り替え費用を負担すべきである。
(ソ) 和室壁
落書きがあるため,張り替えざるを得なかった。控訴人は,37平方メートル中,19平方メートルの張り替え費用を負担すべきである。
イ 控訴人
敷金は,自然損耗以外の最小限必要な箇所の修繕費用にのみ充当されるべきものであり,賃貸人は,賃借人に対し,残りの敷金全額を返還すべきである。
本件建物は,建築から控訴人退去時まで約8年が経過しており,かつ,同建物への入居は,控訴人において三世帯目であったから,控訴人の退去にかかわらずリフォームの時期を迎えていたものといえる。また,控訴人は,本件建物を通常の方法で使用してきたものであり,その生じた損耗は,いずれも自然損耗の範囲内である。したがって,控訴人が負担すべき修繕費用は発生していない。それにもかかわらず,被控訴人は,和室,洋室,台所,玄関等の壁及び床を張り替える等ほぼ全面的な修繕を行い,その要した費用26万2993円を不当にも敷金から控除したものである。
被控訴人の主張する各補修箇所については,以下のとおり認否反論する。
(ア)和室の襖の汚損については,落書きで汚したのは襖1枚であり,補修費用は500円である。
(イ)郵便ポストは,控訴人において破壊していない。
(ウ)敷居リアテックシートは,その破損があったとしても通常損耗の範囲である。
(エ)ハウスクリーニングは,原状回復義務の範囲外である。控訴人は,通常の清掃はしていた。また,本件賃貸借契約締結時においても,退去時に清掃を行うことのみで,退去に当たって別途ハウスクリーニング代金を支払う旨の特約は結んでいない。被控訴人が主張するハウスクリーニング代金は不当に高額である。
(オ)及び(カ)は,いずれも通常の自然損耗である。
(キ)ダイニングキッチン床の赤い汚れは,落書きでなく,食器棚の底面の跡であり,通常損耗である。
(ク)ダイニングキッチン壁及び(ケ)洋室床に落書き等の汚損はない。
(コ)洋室壁は,50センチメートル四方の落書きがある程度であり,張り替えを要するとしても,壁紙代として500円にも満たないものである。
(サ)洗面所床の紫色の汚れは,控訴人の入居前からあったものである。
(シ)洗面所壁は,汚損していない。
(ス)シール跡は,除去可能のはずである。
(セ)玄関壁に落書きはなく,他に汚れがあったとしても通常の自然損耗である。
(ソ)和室壁の落書きは,壁紙代にして500円程度である。
(3) 結論
ア 控訴人の主張
よって,控訴人は,被控訴人に対し,敷金70万円から返還済みの15万7007円を差し引いた54万2993円及びこれに対する請求の拡張申立書送達の日の翌日である平成14年2月24日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
イ 被控訴人の反論
被控訴人は,控訴人に対し,敷金70万円から敷引28万円及び補修費用26万2993円を控除した15万7007円を既に返還済みであるので,控訴人に対し返還すべき敷金は存在しない。
第3 当裁判所の判断
1 本件敷引約定の有効性について
控訴人は,本件敷引約定について,敷引金の使途及び性質に関し,口頭でも書面上でも何ら説明がなされず,不合理であるから無効であると主張する。
しかしながら,一般に,建物賃貸借契約において,敷金ないし保証金の一部を敷引金として,その使途及び性質を明示することなく賃貸人が取得する旨を定めるいわゆる敷引約定はしばしばみられるところである。そして,それら敷引約定は,一般的には,賃貸借契約成立の謝礼,賃料の実質的な先払い,契約更新時の更新料,建物の自然損耗による修繕に必要な費用,新規賃借人の募集に要する費用や新規賃借人入居までの空室損料等さまざまな性質を有するものにつき,渾然一体のものとして,一定額の金員を賃貸人に帰属させることをあらかじめ合意したものと解されるところ,それら敷引約定はそれなりの合理性を有するものと認められるから,その金額が著しく高額であって暴利行為に当たるなどの特段の事由がない限りは,その合意は有効である。
そこで,本件敷引約定についてみるに,前記争いのない事実,証拠(甲1,30,57,乙2)及び弁論の全趣旨によれば,本件敷引約定も,建物の自然損耗よる修繕に必要な費用等に充てられるものとして,あらかじめ一定額の金員を賃貸人である被控訴人に帰属させることを合意したものと認められ,また,その額についても特に著しく高額であるとか,その他これを無効とすべき事由があるとは認められない。
以上のとおりで,本件敷引約定は有効な約定と解され,これが無効であるとの控訴人の主張は採用できない。
2 本件敷金から控除すべき修繕費用について
(1) 一般に,賃借人は,通常の使用収益に伴つて生ずべき自然的損耗は別として,その程度を超えて,賃借人の保管義務違反等の責に帰すべき事由によつて賃借物を毀損等した場合は,賃借物の返還に際し,これを修理して賃借当初の原状に復すべき義務を負っている。
そして,賃借人が,賃貸借契約終了後,修理義務ある毀損等の個所を未修理のままに放置して顧みないときは,賃貸人は,賃借人に対し,その不履行によって生じた損害賠償として修繕費用の支払を求めることができるし,これを敷金から控除してその弁済に充てることができるものである。
(2) そこで,被控訴人主張にかかる本件各汚損等につき,それらが通常の使用収益によって生ずべき自然的損耗を超えた保管義務違反によるものか否か,及びこれに該当する場合の修繕に要する費用を以下検討する。
ア 和室の襖
被控訴人は,襖4枚に控訴人の子による落書きがあると主張するが,証拠(甲8〜11,57,乙2,8)によれば,落書きが認められる襖は1枚(甲9,乙8に撮影されたもの)に過ぎず,その他の襖には染みらしき汚れが認められるものの,それが経年変化ではなく控訴人の保管義務違反によるものであることを認めるに足りる証拠はない。
そうすると,控訴人が修繕費を負担すべき襖は1枚と認めるべきであり,証拠(甲4)によれば,その費用は5250円(5000円×1及び消費税)と認められる。
イ 郵便ポスト
証拠(甲12)及び弁論の全趣旨によれば,玄関ドアに引っかける部分の破損が認められるところ,その破損状況からすれば,郵便ポストを取り替えざるを得ないものと認められ,証拠(甲4)によれば,郵便ポストの取り替え費用は9450円(9000円及び消費税)であることが認められる。
ウ 敷居リアテックシート
敷居リアテックシートについては,その破損の程度を明らかにする証拠がないため,それが通常の使用の範囲を超える破損であるかの否かを確定できない。したがって,その張り替え費用を控訴人が負担すべきものとは認めることができない。
エ 台所,トイレ,風呂,換気扇,洗面器の汚損
証拠(甲56,57,乙1,2,4〜6,12,15,16)によれば,控訴人が本件建物の使用中にその手入れ,清掃を怠った結果,本件建物明渡しの時点において,台所のガスコンロ置き場や換気扇には油汚れやすすが,風呂,トイレ及び洗面器には水垢及びカビ等が,いずれも通常の使用による汚損の程度を超えて付着していたことが認められる。
証拠(甲41)及び弁論の全趣旨によれば,それら清掃に要した費用は3万1500円(台所1万円,トイレ,換気扇,風呂,洗面器各5000円×4及び消費税)と認められる。
オ 浴室コーキング
被控訴人は,カビがひどく目地部分のコーキングのやり直しが必要であると主張するが,カビ等の発生はあったとしても,清掃では足りず,コーキングのやり直しまでが必要なものであったことを認めるに足りる的確な証拠はなく,コーキングのやり直し費用を控訴人が負担すべきものとは認められない。
カ 畳
被控訴人は,畳3畳について,自然的損耗の程度を超える染みがあると主張するが,証拠(甲14,57,乙9)によれば,そのような染みは畳1畳にしか認められない。
そうすると,控訴人が表替え費用を負担すべき畳は1枚と認めるべきであり,証拠(甲4)によれば,その費用は4305円(4100円及び消費税)と認められる。
キ ダイニングキッチン床
証拠(甲16,57,乙10,13の1〜3)によれば,ダイニングキッチンの床に赤い落書きが認められるものの,同落書きは1平方メートル四方内にとどまることが認められる。
なお,その他の汚損は,家具の設置跡であると推認されるところ,家具の設置は必然的なものである以上,通常使用の範囲内であると認められる。
そうすると,控訴人が修繕費を負担すべき範囲は1平方メートル分と認めるべきであり,証拠(甲4)によれば,その修繕に要するダイニングキッチン床張り替え費用は4200円(4000円×1平方メートル及び消費税)と認められる。
ク ダイニングキッチン壁
被控訴人は,青の落書きがあると主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。もっとも,証拠(甲18,19,57)によれば,ダイニングキッチン壁に黒ずみのあることが認められるが,これは自然損耗による汚れではないかと考えられる。その他,ダイニングキッチン壁張り替え費用を控訴人の負担とすべきことを認めるに足りる証拠はない。
ケ 洋室床
証拠(甲57,乙14,22)によれば,洋室の床に青い落書きがあるものの,同落書きは1平方メートル四方内にとどまることが認められる。
なお,その他の汚損は,家具の設置跡であると考えられるところ,家具の設置は必然的なものである以上,通常使用の範囲内であると認められる。
そうすると,控訴人が修繕費を負担すべき範囲は1平方メートル分と認めるべきであり,証拠(甲4)によれば,その修繕に要する洋室床張り替え費用は4200円(4000円×1平方メートル及び消費税)と認められる。
コ 洋室壁
証拠(甲21,57)によれば,洋室の壁に青色及び赤色の落書き並びに茶色のシミが認められるが,それら落書き等は1平方メートル四方内にとどまるものと認められる。
そうすると,控訴人が修繕費を負担すべき範囲は1平方メートル分と認めるべきであり,証拠(甲4)によれば,その修繕に要する洋室壁張り替え費用は1260円(1200円×1平方メートル及び消費税)と認められる。
サ 洗面所床
証拠(甲25,57,乙7,17)によれば,洗面所の床に紫色に変色した汚損が認められるが,同汚損は1平方メートル四方内にとどまるものと認められる。
そうすると,控訴人が修繕費を負担すべき範囲は1平方メートル分と認めるべきであり,証拠(甲4)によれば,その修繕に要する洗面所床張り替え費用は4200円(4000円×1平方メートル及び消費税)と認められる。
シ 洗面所壁
洗面所壁については,自然損耗を超える汚損等があることを認めるに足りる証拠はない。
ス 玄関床
証拠(甲27,57,乙18)によれば,玄関床のフローリングにシールをはがした跡及び変色部分が認められるが,それら痕跡及び変色部分は1平方メートル四方内にとどまるものと認められる。
そうすると,控訴人が修繕費を負担すべき範囲は1平方メートル分と認めるべきであり,証拠(甲4)によれば,その修繕に要する玄関床張り替え費用は4200円(4000円×1平方メートル及び消費税)と認められる。
セ 玄関壁
証拠(甲28,57,乙19)によれば,玄関壁に落書き及びシミないし茶色の変色が認められるが,それら落書き等は1平方メートル四方内にとどまるものと認められる。
そうすると,控訴人が修繕費を負担すべき範囲は1平方メートル分と認めるべきであり,証拠(甲4)によれば,その修繕に要する玄関壁張り替え費用は1260円(1200円×1平方メートル及び消費税)と認められる。
ソ 和室壁
証拠(甲29,57,乙20)によれば,和室壁に落書き及び鉤裂き等の破損が認められるが,それら落書き等は2平方メートル四方内にとどまるものと認められる。
そうすると,控訴人が修繕費を負担すべき範囲は2平方メートル分と認めるべきであり,証拠(甲4)によれば,その修繕に要する和室壁張り替え費用は2520円(1200円×2平方メートル及び消費税)と認められる。
(3) 以上のとおりで,控訴人が負担すべき修繕費用として敷金から控除できるのは,前記(2)のア,イ,エ,カ,キ,ケ,コ,サ,ス,セ,ソで各認定した費用の合計である7万2345円ということとなる。
3 したがって,被控訴人は,控訴人に対し,敷金70万円から,敷引金28万円,既に返還済みの敷金15万7007円及び上記認定の修繕費用合計7万2345円を控除した19万0648円について返還義務を負う。
4 結論
以上によれば,控訴人の被控訴人に対する本件敷金返還請求は,19万0648円及びこれに対する請求の拡張申立書送達の日の翌日である平成14年2月24日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度において理由があるからこれを認容し,その余は失当として棄却すべきである。
よって,本件控訴(当審における追加・拡張請求を含む)は一部理由があるからこれに基づき原判決を変更し,本件附帯控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。
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